売上原価と販管費をしっかりと区別していますか?
こんにちは。
金融機関で融資、投資会社で事業再生、調査会社で信用調査をしていた岩瀬です。
現在は独立し、主に中小企業の社外財務担当者として資金調達支援などを行っています。
今回は「売上原価と販管費をしっかりと区別していますか?」というテーマについて、私なりの考えをお伝えしたいと思います。
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違和感を感じる決算書
テレアポなどの営業代行を行っている企業から融資の相談を受けたときのことです。
決算書を見てみると、損益計算書の売上原価に「仕入高」という項目がありました。
*売上原価とはざっくり言うと売上に比例して変動する費用のことで、飲食業なら食材などの材料費、建設業や製造業なら資材や部品、現場や工場の人件費などがあります。
営業代行業の売上原価としては、成果報酬型の業務委託などを外注費として計上することなどが考えられます。
ただ、この企業の売上原価には「仕入高」という項目が計上されていました。
私の第一印象としては、「仕入高?どういうこと?」という感じでした。
実際に商品を仕入れているとすれば、営業代行業ではなく販売代理店として卸売業や小売業を行っている可能性も考えられます。
その企業の経営者に聞いてみたところ仕入れは行っておらず、「仕入高」に何が計上されているか分からなかったため、税理士に確認してもらいました。
結果としては、テレアポを行うときに使う管理システムの月額利用料や電話代を「仕入高」として計上していました。
一度違和感を感じると他の部分も疑ってしまう
個人的な意見としては、システム利用料や電話代は「仕入高」ではなく販管費に計上した方が良いと思い税理士に確認してもらいましたが、「このままでも問題ない(修正しない)」という回答でしたのでそのまま融資を申込みました。
予想した通りでしたが、融資を申込んだすべての銀行から「仕入高」について細かく質問され、「本当に仕入れはしてないんですね?」と何度も念押しされました。
このケースからお伝えしたいポイントがふたつあります。
ひとつは「税理士の対応」、もうひとつは「銀行の対応」です。
まずは税理士の対応についてですが、「税理士が問題ない」という意味は、大抵の場合は「税金の計算上は問題ない」という意味であって、「銀行に不信感を持たれることはない」という意味ではありません。
費用を売上原価に計上しようと販管費に計上しようと納税額は変わらないため、あくまでも税法上は問題ないということです。
結局、銀行からの評価を上げたい、経営に役立てたいと思うなら、決算書の内容について経営者が自分で責任を負わないといけません。
次に銀行の対応についてですが、今回のケースを見て「ひとつくらい気になる部分があっても大した問題じゃないだろう」と感じた方は注意が必要です。
銀行は基本的に「100%返済できるだろう」と思う企業にしか融資をしません。
決算書を見て気になる部分があったときに、「他の部分は大丈夫だろう」とは思わず、「他にも何か問題があるんじゃないか」と考えます。
銀行の立場で考えてみる
どの銀行も人員削減を行っているため現場の融資担当者は忙しく、経営者に決算書の内容を確認してもきちんとした回答が返ってこないことも多いため、気になった部分をすべて確認している余裕はありません。
そのため、融資担当者もよく分からないまま稟議書を作成して審査を行い、結果として融資を受けられないということになります。
融資の審査をする上で決算書が1番大事なのは間違いありませんが、決算書だけで審査をしているわけではありません。
よく分からない部分や怪しい部分は0評価やマイナス評価になりますし、前向きな材料があったり積極的に融資をしたい事情などがあればプラス評価になります。
「取り敢えず決算書を持って行って融資を申込み、後は銀行から言われた書類を用意して、銀行から聞かれた質問に答える。」、決算書がきれいなうちはこれでも良いかも知れませんが、苦しくなった時に支援してもらえるような関係にはなれないかも知れません。
継続的に融資を必要とする中小企業は、お得意様と付き合うのと同じくらいの気持ちで銀行とも付き合うことをお勧めしています。
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