融資を申込む時に資金使途を意識していますか?
こんにちは。
金融機関で融資、投資会社で事業再生、調査会社で信用調査をしていた岩瀬です。
現在は独立し、主に中小企業の社外財務担当者として資金調達支援などを行っています。
今回は「融資を申込む時に資金使途を意識していますか?」というテーマについて、私なりの考えをお伝えしたいと思います。
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資金使途とは?
資金使途とはお金の使い道のことで、「銀行から融資を受けたお金を何に使うのか」ということです。
資金使途は大きく設備資金と運転資金の2つに分かれます。
設備資金は機械の購入や建物の建設などに必要になる資金で、融資を申込む時に見積書などを銀行に提出し、融資を受けた時に振込を行って領収書なども確認します。
運転資金は商品の仕入れや人件費の支払いなどに必要になる資金で、見積書や領収書などは特に必要ありませんが、銀行は念のため融資したお金を使い切るまでは預金口座の取引履歴を確認しています。
資金使途の基本的な考え方としては、「設備資金に該当しないものはすべて運転資金」と考えてもらっても大丈夫です。
ここでポイントとなるのは、「一口に運転資金と言ってもいろんなお金の使い道があり、実際に何にお金を使ったのかを銀行が把握しにくい」ということです。
設備資金は事前に見積もりを確認して、後から領収書ももらうため、実際のお金の使い道がはっきりと分かります。
運転資金は設備資金のようには行かず、例えば融資したお金を他の銀行の口座に振り替えてしまったら、銀行はその後のお金の流れを把握することができません。
前向きな運転資金と後ろ向きな運転資金
業績が拡大し、仕入や人件費、家賃などの支払いが増加した(または増加する)場合に必要になる資金は前向きな運転資金だと考えられ、銀行としては積極的に融資を行いたいはずです。
こういった場合に銀行が知りたいのは、今後の売上の見通しとその根拠、在庫の状況、売上の増加以上に経費が増えていないか、といったことなどです。
逆に、赤字が続いて手元資金が減ってきたので融資を受けたい、ということになると赤字を補填するための後ろ向きな運転資金だと判断します。
そういった場合に銀行が知りたいのは、いつまでに赤字を解消できるのか、どうやって赤字を解消するのか、といったことなどです。
銀行は資金使途だけ確認しているわけではない
運転資金として銀行から融資を受けようとすると、「何の支払いに使うのか」、銀行から確認されるはずです。
その質問の答えで、経営者の経営手腕や今後の融資方針も判断しています。
理想としては、銀行が融資を審査するときの稟議書にそのまま書けるような内容になっていることが望ましいです。
審査担当者が見ても納得できる内容になっているはずですし、融資担当者も稟議書の内容を自分で考える必要がなくなるため、その経営者と積極的に付き合いたくなります。
逆に、何度も質問したり追加資料などで確認しないといけないようだと、稟議書を書くのも大変ですし、上司や審査担当者からの質問にちゃんと答えられないと融資担当者の銀行内での評価も下がるため、あまりその経営者と付き合いたくなくなります。
そうなると融資できるかどうか微妙な判断が必要なときに、融資担当者が「この企業は大丈夫です」とはっきりと言えるのか、それとも「止めておいた方が良いかも知れません」と言うのかで、審査結果が変わってきます。
まとめ
資金使途を設備資金と運転資金に分けて考えるのは間違っていませんが、銀行に対して「運転資金が必要」と言うだけでは不十分で、取り敢えず銀行に融資を申込んで質問されたことに答えているだけでは、なかなか銀行からの評価は上がりません。
経営者からすれば質問に答えているつもりでも、銀行からすると「ちゃんとした答えが返ってくることはほとんどない」という認識です。
最近増えてきたのが、「手元資金が少なくなってきたから追加融資を受けたい」という相談です。
物価や人件費の上昇、コロナ融資の本格的な返済の開始など、手元資金が減少する理由が多いのは分かりますが、銀行の立場からしたら赤字を補填するための資金を融資するのはリスクが高いので、納得できる説明が必要になります。
融資を申込む際に意識されることの少ない「資金使途」ですが、私はとても重要なテーマだと考えています。
参考までに弊社が支援している企業では、融資を申込む前に資金使途や返済できる根拠、伝えた方が良いこと、伝えない方が良いことなどを事前に経営者とすり合わせた上で申込みを行っています。
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