経営改善計画策定支援事業(405事業)とは? 制度の概要、全体の流れ、注意点なども解説
(最終更新日:2023年8月23日)
「資金繰りに不安があるけど、どうしたら良いか分からない。」
コロナ融資の返済が本格的に始まるにつれて、資金繰りに関する相談が増えてきました。
一度資金繰りに問題を抱えると、「資金繰りが気になって他のことが手につかない。」という状態に陥りやすく、「取り敢えず資金調達(銀行からの追加融資など)を行って当面の運転資金を確保しよう。」ということになりがちです。
もちろん短期的な資金繰り対策も必要ですが、資金調達を行っただけでは資金繰りが悪化した原因である根本的な問題(収益性が低いなど)の解決には繋がらないことがほとんどです。
そして、「①資金繰りが気になって他のことが手につかない。」⇒「②何も変わらないまま資金だけが減っていく」⇒「③資金繰りが更に悪化する」、という悪循環が始まってしまいます。
そうならないためにも活用したい制度が、「経営改善計画策定支援事業(405事業)」です。
本コラムでは「経営改善計画策定支援事業(405事業)という言葉を初めて聞いた」という方に向けて、制度の概要、全体の流れ、注意点などを解説しています。
中小企業庁のHPによると以下のような方に本制度の利用を勧めていますので、このような課題を抱えている方は最後までご覧ください。
金融機関から支援(リスケや借換など)を受けて資金繰りを安定させながら、
- 必要な売上や利益を確保できる経営管理やガバナンス体制の整備をしたい
- 人件費以外でコスト削減を図りたい
- 黒字体質の経営に転換させるための経営計画を持ちたい
- 業績悪化の根本的な課題を把握したい
- 経営改善の取り組みを伴走支援してほしい
目次
1.経営改善計画策定支援事業(405事業)とは?
2.経営改善計画策定支援事業(405事業)の概要
3.経営改善計画策定支援事業(405事業)の全体の流れ
4.経営改善計画策定支援事業(405事業)を利用する際の注意点
5.まとめ
6.無料経営相談のご案内
1.経営改善計画策定支援事業(405事業)とは?
経営改善計画策定支援事業(405事業)とは、「国が実施している中小企業支援策の一つで、補助金(総費用の2/3)を活用して、国から認定された専門家から、経営改善計画の策定支援と伴走支援(実行支援)を受けられる制度」のことを言います。
2013年に本制度が始まったときの予算額が405億円であったため、通称「405事業」と言われています。
2.経営改善計画策定支援事業(405事業)の概要
(1)対象となる企業
以下の要件にすべて当てはまる中小企業(個人事業主も含む)が対象となります。
- 借入金の返済負担などにより財務上の問題を抱えている(資金繰りに不安がある)
- 自社で経営改善計画を策定することが難しい(経営状況を改善させたいが、自分で行うのは難しい)
- 経営改善計画の策定支援を受けることで、金融機関からの支援(リスケや借換など)が見込まれる
(2)経営改善計画の策定
経営改善計画策定支援事業(405事業)では、国から認定された専門家の支援を受けて、新たに経営改善計画を策定する必要があり、既に策定済みの経営改善計画をそのまま利用したり、専門家の支援を受けずに自社だけで策定する場合は本制度の対象となりません。
経営改善計画の内容について明確な定義はありませんが、一般的には業績の悪化した企業が金融機関に支援(リスケや借換など)を求める際に提出を求められる、経営状況を改善させるための事業計画として認識されています。
本制度における経営改善計画は、以下の内容を含むものとされています。
- 会社概要表(株主、役員構成、役員等との資金貸借、沿革等)
- ビジネスモデル俯瞰図(グループ企業等がある場合は企業集団の状況を含む)
- 経営課題の内容と解決に向けた基本方針
- アクションプラン(各経営課題の解決のための具体的な行動計画)及び伴走支援計画(計画内容に応じた期間(原則3年程度))
- 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の計数計画
- 資金繰表(実績・計画)
- 金融支援の依頼内容(条件変更、融資行為等)
- 資産保全表
- その他必要とする書類
(3)金融機関からの支援
経営改善計画策定支援事業(405事業)では、金融機関からの支援(金融支援)を受けることが利用するための条件となっています。
本制度の利用を申請する際に金融機関から、「経営改善計画を策定する前提で金融支援を検討する」という確認を取り、最終的に金融支援を含んだ経営改善計画の同意を取得することで、金融支援を受けられるというのが一般的です。
具体的な金融支援の内容は以下のようなものとなっています。
基本的にはリスケ(元金の支払猶予等)を行う(または既に行っている)ことが多いですが、同額借換や債務の一本化、新規での貸付実行などを行うこともあります。
(4)費用の目安と支援金額(補助金額)
支援する専門家や支援を受ける企業の事業内容などによって費用は異なりますが、目安となる金額が国から示されています。
本制度の趣旨を反映し、補助金額は直接専門家に支払われるため、本制度を利用する企業は自己負担分である総費用の1/3だけ支払えばよく、総費用の全額を一旦先に支払う必要はありません。
また、各都道府県により異なりますが、自己負担分に対して更に補助が出る場合もあります。
3.経営改善計画策定支援事業(405事業)の全体の流れ
(1)国から認定された専門家を探す
経営改善計画策定支援事業(405事業)は、国から認定された専門家である認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて利用する制度となっているため、まずは支援を受けられる専門家を探す必要があります。
税理士事務所の多くが専門家として国から認定されているため、顧問税理士に相談してみるのが一番簡単ですが、顧問税理士がいなかったり、対応できない場合は、取引のある金融機関に相談したり、インターネットなどで探すのが一般的です。
(2)経営改善計画策定支援事業(405事業)の利用を申請する
経営改善計画策定支援事業(405事業)は、金融機関からの支援(リスケや借換など)を伴う経営改善計画を策定することが利用するための条件となっています。
そのため、本制度の利用を申請する際には原則として、利用者(企業)、専門家(認定支援機関)、金融機関(メインバンク)の3者が連名で申請することとなっています。
書類を準備すれば金融機関が署名してくれる訳ではありませんので、事前に金融機関(メインバンク)に相談し、今後の方向性などを共有しておく必要があります。
無事に利用の申請が認められると、経営改善計画策定支援事業(405事業)が本格的に始まります。
(3)経営改善計画を策定する
経営改善計画を策定する流れは、以下のようになっていることが一般的です。
①現状分析(実施期間の目安:1ヵ月~1ヵ月半)
財務分析や事業分析などを行い、現在の状況を把握する。
②戦略立案(実施期間の目安:1ヵ月~1ヵ月半)
経営状況を改善させるために必要な対応策などを検討する。
③計画策定(実施期間の目安:1ヵ月)
具体的な数値目標や行動目標、期限などを検討する。
本制度を利用する企業の事業内容や事業規模などによって異なりますが、概ね3ヵ月~4ヵ月で経営改善計画を策定します。
(4)金融機関から経営改善計画への同意を取得する
経営改善計画を策定したらそれで終わりというわけではなく、策定した経営改善計画の内容について、支援してくれるすべての金融機関から同意を取得する必要があります。
通常はバンクミーティングを行って経営改善計画の内容を説明し、その後の質疑応答期間を経て、同意書を取得するという流れになります。
大きな問題が起こらず順調に進めば1ヵ月ほどで同意を取得できますが、大幅な計画の修正などを求められた場合は更に数ヵ月かかることもありますので、少なくともメインバンクとは計画を策定する段階から情報を共有しておく必要があります。
(5)経営改善計画に沿って経営改善を進める
経営改善の実施は原則として、本事業を利用する企業自身で行う必要があります。
ただ、現実的には自社だけで進めるのは難しいことが多いため、計画策定後3年間は専門家が伴走支援(実行支援)を行います。
伴走支援の内容は単なる進捗管理だけでなく、計画通りに行かなかった場合の修正案の検討や、金融機関への報告書の作成なども行います。
4.経営改善計画策定支援事業(405事業)を利用する際の注意点
(1)経営者の行動が評価される
金融機関は通常の場合、決算書や事業計画、ヒアリングなどを通して取引先(融資先)の企業を評価しているため、実績面は分かりますが行動面は分からない(把握できない)ことが多いです。
経営改善計画策定支援事業(405事業)を利用する場合は、経営改善計画を策定するだけでなく伴走支援も行いますので、計画通りに実行したかどうかも評価されるようになります。
また、金融機関の担当者が代わっても、経営改善計画や伴走支援の際に作成する報告書は残るため、良い意味でも悪い意味でも実績として残っていきます。
(2)適切な専門家に依頼する
専門家によって支援内容や費用が大きく異なります。
金融機関から支援(リスケや借換など)を受けるために経営改善計画が必要になったという方の場合は、支援内容が充実しているかどうかよりも安く早く進めてくれるかどうかで判断するという考え方もあります。
ただ、そもそも経営状況が改善しないと意味がないという方の場合は、費用が安いかどうかよりも支援内容が充実しているかどうかで判断しないといけないはずです。
資金繰りに不安があるからこそ、何のために経営改善計画策定支援事業(405事業)を利用するのかをしっかりと考え、限りある資金を有効に使わなければなりません。
5.まとめ
経営改善計画策定支援事業(405事業)は、国が実施している中小企業支援策の一つで、補助金(総費用の2/3)を活用して、国から認定された専門家から、経営改善計画の策定支援と伴走支援(実行支援)を受けられる制度です。
特に費用面(自己負担額)で大きなメリットがあり、専門家に依頼したくても高額な費用を負担するのは難しいという方でも、本制度を活用すれば割安な費用で充実したサービスを受けられる可能性もあります。
6.無料経営相談のご案内
無料経営相談では本制度の詳細や利用の可否について個別にご案内しており、仮に利用が難しいと思われる場合には次善の対応策もアドバイスさせていただきます。
なお、サービスの質を維持するために対応可能件数に上限を設けているため、タイミングによっては支援を開始するまでしばらくお待ちいただく場合もございます。
また、本制度を活用して経営改善に取り組んでも、結果が出るまでに早くても数ヵ月はかかります。
経営状況が悪化すればするほど、残された時間も選択肢も限られていくため、できるだけ余裕を持って早めにご相談ください。
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